元です。
シドニーの「Tetsuya's」と並んで、僕が一度は行ってみたいと思う、世界一と謳われるスペインのレストラン、「El Bulli」(エル・ブリ、エル・ブジという発音もある)。そんな話をしていると、日本でも、エルブリで修行した山田シェフの店があると聞き、さっそく行ってみる。
彦麻呂の「味のIT革命や〜」という表現がきっと一番似合うレストランだ。
最近六本木や元麻布の影に隠れがちだが、元祖(?)ヒルズのアークヒルズのエグゼクティブタワー1階にひっそりとあるのが「旬香亭デ・メルカド」。事前に電話予約をするタイミングでコースを選ぶのだが、「苦手な食材はありますか?」と丁寧な対応で好感が持てる。コースは、7,000円、9,500円、12,000円の3コース。真ん中の9,500円のコースにしてみる。コースの内容は日替わりのようで、その日の素材の状況でアレンジしているらしい。
店内は、落ち着いた作り。テーブルすべてで30席くらいだろうか?ゆとりのある作りなのと、すべての席からオープンキッチンが覗き込め、忙しく動くスタッフの様子も料理と料理の間の楽しみになる感じ。
壁には、おそらくエルブリのキッチンであろう背景に、シェフの集合写真が飾られてる。
1品目のカクテル、ソルティドッグ。ミントと塩の粉末アイスを浮かべたカクテルになっている。さっそくエルブリっぽい。冷たさとミントの香りで、フローズンカクテルのような爽やかな口あたり。ショートカクテルにしてるので、アルコール強いはずなんだが、くいくい飲めちゃう。
ピンチョス7品。手前から、しらうおのサンドイッチ、海老のアヒージョ(唐辛子入りにんにくソースのことらしい)、ツナパイ、地鶏のカナッペ、リオハ風シャンピニオン、(マッシュルームのワイン煮)、サーモンのリエット、穴子のキッシュ。サクサクのしらうおのサンドイッチと、穴子のキッシュが特においしい。ひとつひとつの料理は、サーブされるときに丁寧に説明してくれる。
どこに行っても最初にビールとなってしまう僕だが、ビールのつまみにもいい。すべては一口サイズで、ナイフやフォークはなく、手で食べるスタイル。
続いて生ハムメロン。「生ハムを噛みながら口に残して、メロンを口に入れてください」という説明。メロンは、まるで、卵黄のように、周りにやわらかく包まれており、噛むと夕張メロン(だと思う)の香りが口にパーッと広がって面白い。フィンガーフードとして食べられる生ハムメロンにしてある。
パンとオリーブオイル。
次は、厚岸カキのカレー。後から知ったのだが、厚岸とは、北海道厚岸町のカキで、風味と甘さが強いのが特徴らしい。確かに食べると、カキらしい風味が非常に強い。矛盾する表現だけど、オイスターソースをたっぷり入れたカキみたいだ、と思った。
しかしそれ以上に驚くのがカレー。カキは炭火で焼いているようだが、これに写真真ん中のカレーアイスを乗っけて食べるのだ。カレーのアイスは甘くなく、冷たさとカレーの風味が新鮮。さらに、冷たいカレーアイスをグリルしたあったかいカキに乗っけて食べると、なんとも経験したことない楽しいことになる。手前のカリフラワーのピュレ、奥のトマトのピュレも合わせて楽しむスタイル。これがかなりヒット。
こちらは、マンハッタンクラムチャウダー。日本ではアサリが多いが、アメリカではハマグリが多いクラムチャウダー。中に、ハマグリを沈めてある。どうやらニューヨークのクラムチャウダーはトマトスープで、ボストンでは、クリームらしい。それを2層に重ねてマンハッタンクラムチャウダーということだ。混ぜずに食べると、味のモザイク、後半混ぜると、一体となった新しい味が楽しめる面白さ。これも新鮮だし、おいしい。
ほうれん草のオムレツ。出てきた状態はとてもオムレツとは思えない。細く裂いた鶏のササミ、ほうれん草、ほうれん草のペーストが乗っている。「下に鶉の卵が入っているので、よくかき混ぜて、テーブルでオムレツにしてください」とのことで、かき混ぜて食べると確かにオムレツの味。
エビ芋のニョッキ、イベリコ豚のボロネーズとパルメザンのアイレ。下に大ぶりの挽肉で味がしっかりうまいボロネーズがしいてあり、その上に、えび芋のニョッキが乗っかる。その上に泡状になっているのは、パルメザンチーズ。
アイレとはスペイン語で空気という意味らしく、フワフワにホイップしたチーズの様子を表しているらしい。チーズの風味もかすかにする程度にしてあり、その意味でも空気のようなわずかな風味ということなんだろうと思う。
フォアグラの炭火焼、生ハムで似たグリンピース。フォアグラは、最初に脂を落としてあるそうで、脂好きには物足りないかも知れないが、周りは香ばしく、中はすこし締まった味になっている。フォアグラの味としては新しい。グリンピースが煮込んである生ハムのソースも塩味が強めで、グリンピースの青臭さに負けない。
カリフラワーのクスクス。セモリナでなく、カリフラワーでクスクス風に仕上げている料理。周りのリンゴやハーブ類で食べるごとにいろんな味がして楽しい。小麦で作らないのは、コース全体を重くしすぎない配慮か?
フォアグラとコンソメ。テーブルに粉状のものが入ったお皿が置かれ、その場でスープが注がれる。こちらもフォアグラは粉状のアイスになっている。温かいスープに溶けないうちに食べるように言われるが、「あったかいものと冷たいもの、コンソメスープとフォアグラの風味」が口の中でいっしょくたんになる体験はなかなかできない。
メバルと手長エビ、そのスープのワサビ風。この辺はフレンチ的。メバルもエビもいい素材なんだろう、おいしい。添えられた獅子唐、僕が食べたのが当たりだったようで、しばらく口がしびれるほど辛い。
メインは、4〜5種類から選ぶのだが、僕は、和牛ランプのステーキを。和風洋風でソースを選べるが、和風にする。ワサビと大根おろしが添えられている。
Kちゃんのメインは、和牛テールとイチボのテンプラニーリョ煮混み。コチラがメインでは当たり。トロトロにとろける、テール肉と、ワインのほんのり甘いソースが最高。ちなみに無学なのだが、テンプラニーリョは、スペインのワインで一番ポピュラーなぶどうの品種だそうで。知りませんでした。
出てきて、すぐに食べてくださいと言われるパンコンチョコラーテ。ドライアイスのように白い煙がモクモクと出ている。食べるとあるエンターテイメントになるのだが、それは行ってのお楽しみにしておいた方がいい。ちょっとした笑いがこぼれてしまう楽しいひととき。ちなみに、-196度の液体窒素で、チョコレート、シナモンなどを冷凍粉砕している口直し。口が急激にヒヤッとして、強制的にサッパリする。
イチゴショートのカクテル。上にイチゴホイップ、真ん中に、イチゴのスライス。一番下には生クリームが。
ここから怒涛のデザート攻め。まずは、メープルシロップのコルネ。メープルはここのお家芸だと思えるホイップで。
チョコバナナは串で。チョコもバナナもガレットになっている。サクサクのチョコバナナ。
オリーブのマドレーヌ。
ロッシェ。これもフランスを代表する焼き菓子のひとつのようで。
かぼちゃの種のシナモン風味。かぼちゃの種にシナモンとチョコパウダーがふりかけてある。
チュロスピペット。ピペットって中学の化学で習いましたね。揚げたチュロスが刺さっている串は、チョコレートのピペットになっており、チューチュー吸って食べる変り種。
こぼれないカプチーノ。カップが逆さに出てくる。「こぼれてないか確認してください」とのこと。
中を覗くと、カプチーノホイップになっている。だからこぼれないのか、と。
以上、すごい数の、そして楽しい食事が終わり、かなりお腹いっぱい。食に対する楽しみ方、というより遊び方を追求しているので、新しい味の感じ方がいっぱいつまっている料理たち。
食感、五味、温冷、を全部要素分解してばらばらにしたあと、いろんな組み合わせを試しているような、実験的料理だ。しかし、それぞれの研究はちゃんと美味しいレベルに完成されており、ただ楽しいだけじゃなく、舌もちゃんと満足できる。まさに、味のIT革命や〜。
お酒は、ワインが5,000円くらいから。焼酎や日本酒、その他洋酒もちょっとおいてある。2人でビールと、ワインのボトルをあけて、トータル30,000円ちょっと。
雰囲気もよく、店員さんのサービスにもぬかりない。決して堅苦しい肩肘張る空気はないが、かといって、気持ちよい緊張感もある。気の置けない友人や家族で行くときっといい時間が過ごせたと思えるお店だろう。コースの内容は日替わりということで、素材に四季がある日本だけに、また違う味を楽しみに行ってみたいと思った。
オススメ料理:コース料理
オススメ度:★★★★☆
予算:10,000〜20,000円(夜)
赤坂・スペイン&フレンチ「旬香亭デ・メルカド」
03-3586-6508
東京都港区赤坂1-14-5 アークヒルズエグゼクティブタワー1F